1つのベッドで笑う君と呑気に眠る私

昨日投稿した記事(https://gomikasu0202.hatenablog.com/entry/2022/07/06/171800?_ga=2.33262076.350181499.1657198606-359941485.1657198573)を結構読んでもらって、いろんな人から大丈夫か〜って声かけてもらえて、私は周りの人に恵まれてるなと思いました。



今朝、本当は9時前には家を出なくちゃいけなかったけど、たまにはいいかと自分を甘やかして、二度寝してから、トーストを焼いてゆっくり食べて、まだ少しうとうとしながら豆乳を飲んで、大分遅くなってから家を出た。

予備校に行く途中、Apple Musicで適当に選んだプレイリストから音楽を流して、電車の中でまたうとうとした。このところ薬を多めに飲むことが多くて、眠い時間が増えた。音楽を聴いていたら、ふと頭の中に歌詞が流れ込んできた。


『欲しかったのは「ゴメンね」じゃなくて「愛してる」のひとことでいいのよ』


あ〜そうだな、そういえば、「愛してる」って一度も言われないまま、それなのに「ごめんね」だけは沢山言われて終わったなぁ、と思ったらそんな自分が情けなくて情けなくて、また性懲りも無く泣いた。


ディスコードのサーバーで愚痴を喚き散らして、慰めてもらって、そんなことしながら課題やって少し自習して、授業の時間になった。


私は心理系大学院を目指すために心理系大学院向けの予備校に通っているんだけど、そうなると授業の内容は勿論心理学。

今日は発達心理学の授業だった。


テーマは「愛着」。


心理学を齧ったことがない人向けになんとなく説明するとすると、「養育者に対する特別な情緒的反応」、つまり、子供が親に対して持つ特別な気持ちであってるのかな。私も発達は専門ではないのでなんとも言えないんだけど。

それが今日のテーマ。

私はいわゆるアダルトチルドレンと言われる、まぁ簡単に言うと「子供らしい子供時代を送れなかった人間」なんだけど、だからこそこの発達心理学は苦手でずっと避けてたテーマだった。勿論学部生時代には一通り勉強はしたんだけど。


先生が教壇に立って、『愛着』の文字を黒板に書く。


「みなさん、愛ってなんでしょう?」


いきなりの言葉だった。

先生は続ける。


「心理学は、行動の科学です。ですので、愛を定義づけることは非常に困難です。」


先生は前を見据えたまま、愛着、の 愛 に丸をする。


「しかし、あえて言うとすれば、『特別』であることです。」


「私は妻と結婚してもう10年以上が経ちます。彼女を愛しているかと言われると、愛ってなんだ?と思います。けれど、他の人には感じないなにかを特別彼女から感じることはあります。」


「そして、信頼しています」


まっすぐな言葉に思わず絶句したし、確信した。


私は元恋人、彼に愛されていなかった。




彼はずっといい人だったし優しかったよと言った時に、友達に言われた言葉。


「それってさ、手癖の優しさじゃなくて、君だから特別に出した優しさだった?」


答えはNoだ。

予備校帰り、大きな荷物を持っていた私に笑いながら「荷物持とうか?」と言った。

駅の改札まで私を見送ってくれた。

友達に予定ドタキャンされた〜と愚痴った時、じゃあ俺行くよって言ってくれた。

優しいなと思ってた。事実優しかった。でもどれも、「私だから」じゃない。こんなの友達でも良い。友達に戻りたいと笑った彼の顔を思い出した。私なら、友達でよかった。


先生が続ける。


「人間関係の基本は信頼です。」


「私はこの歳にもなって、妻と並んで寝るんです。それは彼女を信頼出来ているから。もし寝首をかかれたら?もし財布からお金を取られたら?そんなのこと考えていたら、おちおち眠っていられません。」


「けれど私は妻を信頼しています、だから眠ります」


最後の夜、彼の身体に合わせた小さな小さなシングルベッドに2人でただ横になって朝を待ってた時。

彼は毛布の隙間から目を覗かせて言っていた。

「俺、人がいると上手く眠れないんだよなぁ」

私は笑いながら、じゃあベッド出るよ私、とか言って、いやいやいや、それは流石に、とか言われて、結局彼は「背中向けても気にしない?」と私に聞いてきて、私は気にしないから早く寝な、と天井を仰ぎ見て目を閉じた。

1時間くらいだけ寝た。目が覚めたら彼はもうベッドの上にいなくて、パソコンのモニターを見ながら早めの朝ごはんを食べていた。私が起きたことに気がついて、「ベッド広く使って良いのに」と私を押し戻した。


愛されていないどころか、

信頼もされていなかった。


そのことに急に直面させられて、授業中だというのに、声を殺して泣いた。

それはもう、先生がこちらに気がついて、驚いた顔をするくらい思いっきり泣いた。

でも授業は録画されているので、先生は私に気がつかないかのような顔をして授業を続けた。

2時間の授業が永遠に感じられるくらいにつらかった。


別の文脈で、先生はこんなことも話していた。


「愛着形成のタイプは大きく分けて3つあります。おそらく1番苦労するのは、3つ目の『アンビバレント型』です。」


チョークを置く。


「みなさんはこれから心理の専門家になるわけです、そんな人たちに、非専門的な言葉を使って説明するのは不適切です。しかし、みなさんの感性に訴えかけるために、あえてこう表現します。」




「『愛したいし愛されたい、しかし愛されている実感がない』」




心臓が飛び跳ねた。


「ここから先は、それぞれが大人になってから人間関係の認知的枠組みにどのような影響を及ぼすと考えられるかです。


1つ目の回避型は、相手に最初から期待をしていませんし、メリットを見いだせれば近づき、無くなれば離れればいいわけです。お金やセックスがわかりやすいですね。


2つ目の安定型は、文字通り安定しています。相手に裏切られると思って行動しませんし、傷ついても自分にはきちんと帰る場所があると認識出来ています。」


「問題は、アンビバレント型です。愛したいし愛されたいのに、実感出来ない。相手を信頼出来ないから、逃がさないように縛る。そうしないと安心出来ない」


彼と使っていたカレンダー共有アプリ。私が一方的に自分の予定を記入して、これ見て都合の良い時に呼び出してよ、なんて笑っていた。



あれは、私が縛られたくてやっていたことじゃない。

縛られることで、縛るために、行っていた。



私だって、彼を信頼していなかったじゃないか。



そこにはなにもなかったんだ、と気がついて、足元から全部崩れ落ちて、解けるかと思った。


私も彼もお互いをきちんと見ていなかったのかもしれない。

いやでも、それでも。


授業中、前の席だってのに、先生のことなんか無視して泣き続けた。

でもきちんとノートはとっていたのに自分でも笑ってしまった。



それでも私。


私、君を信頼するまではいかなくても、

十分"特別"だったと思うんだ。


連絡がきたら嬉しくて大はしゃぎした、

待ち合わせ前には何回も鏡みて、

何十分も前に着いちゃうことだってあって、

君だけに好かれたくてメイク習いに行ったりとかしたし、

君が生活力ない人だってわかってたから、私がせめて最低限身につけようって思って、掃除とか洗い物とか洗濯とか色々、

君が、本当は会社の先輩じゃなくて、接待で行ったガールズバーの女の子にアドバイスされてイメチェンしたって聞いた時は嫉妬したし、


こういうの、君だけだったんだけど、

"特別"じゃなかったのかな。


もう全部わかんないや。




でも多分、あの最後の夜のベッドでの出来事が全部なんだろうな。


私だけ一緒にいられることに浮かれて、安心して、眠って。

君が背中向けてることに、違和感覚えながらも見ないふりして。

朝になれば大丈夫って思ってた。意味もなく。

それで、薬飲んで寝た。


なにも根拠なんかなかったけど、大丈夫だって思ってたよ。

だって君だったから。


でも全然、そう思ってなかったんでしょ。


虚しいね。虚しいな。


君にとってはきっと長い1か月だったんだろうな。

私にとっては短くて、でも永遠だったけど。


少しでもいいから信頼して欲しかった。

せめて隣で眠ってくれるくらいには。


寂しい。今更寂しい。

前の彼女とはどうだったのとか、聞けばよかったな。

前の彼女の前では眠ったの?

これから出来る彼女達の前では眠るの?


私だけが出来損ないだった?

お願いだから、それだけ教えてほしい。


じゃないと私は、私を愛せない。


私の携帯勝手に覗き見して、待ち受けにしてた画像に書いてあったハンドルネーム、読み上げて、なにこれって言ってたじゃん。


私がここにいるの、本当はわかってるでしょ。


ねぇ、私ここにいるからさ、お願いだから、それだけ教えにきてくれないかな。

私最後まで良い子でいたんだから、そのくらいのわがまま、ダメかな。

泣きもせず、喚きもせず、ただ笑って「別れるの、いいよ」って言って帰った私に、そのくらいのわがまま許されないかな。

私から連絡して、そんなこと聞くの、あんまりにも惨めだから、君から連絡してくれないかな。



ねぇ、届いてるでしょ。


お願い。