※この記事は、アドベンターで開催されている「オススメの十冊」企画のために書いた記事です。詳しくは↓↓↓
オススメの十冊 Advent Calendar 2025 - Adventar
読書が好きだ。ただ、新しい本を読むのはあんまり得意じゃない。わたしは同じ本を何度も読む癖がある。読めば読むだけ、新しい驚きもあるし、読み馴染んだ安心感もある。本棚には大好きな本が詰まっていて、背表紙を撫でるだけで幸せな気持ちになる。孤独な夜にも、わたしに寄り添ってくれる。
そんな風に、生きている中で出会った、10冊の本について話させてほしい。
1.アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス
不朽の名作と言われるこの本。わたしにとっても大切な1冊だ。
知的障害を抱える「チャーリィ」。彼の一人称視点で物語は進んでいく。不器用で優しくて、そんなチャーリィの人生をのぞき見することができる1冊だ。
この本を最初に読んだのは高校生の頃だったと思う。
初めて読んだとき、衝撃を受けた。こんな本があっていいのか、と。
拙いひらがなで紡がれる彼の世界、その世界が、徐々に歪みだす瞬間、そんな大切なものを、わたしがのぞき見できるなんて、と。
この本を読むと、毎回、幸せってなんなんだろうな、と陳腐なことを考える。それは、この本を読む時に避けては通れないテーマであり、そして、「チャーリィ」は「わたし」なのだ、彼は一体幸せだったと言っていいのか?と感じてしまう以上、わたしのこととして考える他ない、と思うのだ。
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2.恋する寄生虫/三秋縋
この本は、この季節に読むからこそ輝く、冬の名作だ。
強迫性障害を抱える主人公、高坂。彼が謎の女子高生と出会うことで、世界は一変していく、というストーリー。
この本を読んだのは、真夏の或る日だった。あぁ、なんてもったいないことをしたんだ!と、本を閉じた瞬間に後悔した。これは、冬に読むべきだった。
寒い季節に、あぁ自分はこのままずっと1人なのかもしれない、と街行くカップルや家族連れを見て絶望したことがある人も、少なくないだろう。そんな人にはぜひ読んでほしい1冊だ。主人公たちが感じる、あの寒空の下の孤独感。それを一緒に感じることができる、なんとも特別な1冊。わたしにとっては、あの空気感すら宝物だ。
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3.センセイの鞄/川上弘美
ある日、主人公のツキコさんは居酒屋で高校時代に自分の学校で国語を担当していた「センセイ」と再会する。そのセンセイとめぐる、季節の物語。
わたしは、人生で1番好きな本は?と訊かれると、毎回この本を挙げる。1番大切で、1番憧れの物語だ。
この本は、とにかく食べ物がおいしそうに描かれる。食べることは生きること、とはよく言ったもので、主人公たちはよく食べ、よく生きる。その生活をのぞき見出来ることが、とても嬉しくて、愛おしい。わたしもこのように誰かと生きられたら、とよく思う。
誰かと生きる、というのは、寝食を一緒にすることが本質ではなく、「こころの中に、その人のための椅子がある」ではないか?と思う。特に、ラストの湯豆腐のシーンでそう思う。心の中にある特別な椅子。この本は、そのことを伝えてくれる本だ。
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4.惑星/木原音瀬
自分のことを「宇宙人だ」という男が主人公のこの本、孤独、絶望、その中に光はあるのか、と、読む度に打ちのめされる。それでも読むのをやめられないのは、この人の書く物語が好きだ、と胸を張って言えるからだ。
この人が書くものが好きだ、と言えるものに、人生でどれだけ出会えるんだろうか。わたしは、この木原さんの書くものが本当に好きだ。木原さんの描く人物達は、生きづらさや歪みを抱えながらも、懸命に藻掻き、時に諦め、絶望し、それでも生きていくほかないのだ、と思わせてくる。目の奥に宿る焔のような揺らめきが、文字越しに伝わってくるのだ。そんなものを描ける人間が、どれだけいるのだろうか。わたしは普段エッセイを書いていて、小説は書かないのだけれど、もし小説が書けるのなら、この人に嫉妬して狂ってしまうと思う。こんな目の奥の焔を描ける人に出会えた人生で、本当によかった。
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5.「ほどよく」なんて生きられない/横道誠×菊池真理子×二村ヒトシ
自分を「依存症だ」と思ったことは、感じたことはあるだろうか?わたしはある。実際に、医者に「危ない状態なので、入院しましょう」と言われ、保護室に2週間ほどぶち込まれたこともある。ドアノブもない、窓の鍵もない、畳に布団が置いてあるだけの簡素な部屋だ。……わたしの話はいいか。なにが言いたいかというと、わたしは「何かに依存して狂っていないと、正気を保てない人間」なのだ。作者の横道さんは発達障害当事者で宗教2世で、依存症当事者の大学教員。菊池さんは宗教2世で依存症の家族がいる元被虐待児の漫画家。そして二村さんはACであり、現役のAV監督。彼らの共通点は、『「ほどよく」なんて生きられない』ことだ。では、そんな彼ら彼女らは、どのようにして生きているのか。……これ以上は、わたしが語ると説教臭くなるし、ついつい自分のことを語りたくなってしまうのでやめておく。ただ、一つ言えること。わたしが「ほどよく」生きるために手に入れたのは、「書くこと」、そして書くことで「繋がる」ことだった。そのことを、改めて思い出させてくれた本だった。
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6.「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。/小川たまか
この本に出合ったのは、小さな個人経営の本屋さんだった。かわいらしい表紙とは裏腹に、ものすごいタイトルだな、と思ったのを覚えている。内容は、世の中にはびこる性被害や丹念に取材された#MeTooについて、時には自分が見過ごしてきていた出来事についてなど……簡単に言えば、所謂フェミニズムについてのものだ。読んでいてめまいがするほど、ひどい世の中!と叫び出したくなる現状。女として生きることの苦痛など、頷きながらも涙してしまう、そんな本。
この本の素敵なところは、作者の小川さんがまだこの世の中を諦めていない、という点だ。この世の、「ほとんどない」とされている凄惨な部分に目を向けつつ、それでも、それでも社会や人間に失望しきらず、ともに生きていく。わたしもそうありたい、と思える。そんな本だ。
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7.地獄堂霊界通信 セカンドシーズン5巻 幸福という名の怪物/香月日輪
続きものの途中の巻を挙げるな、という声はさておき。このシリーズは、街の外れにある「極楽堂(あまりの見た目に地獄堂と呼ばれている)」の店主に出会った3人の小学生男子が主人公だ。わたしが読書を自主的に行うようになったきっかけのSFファンタジー。1巻完結タイプの児童書なので、是非、気になるサブタイトルからでも読んでみてほしい。本当は最初から読んでほしいけれど…。
この巻で、主人公3人組の1人、椎名は「自分の本当の幸福とは」という問いに直面することになる。それはきっと人類に対する問いであり、そして、小学生という小さな男の子にはあまりに重い問いだ。しかし、彼は逃げずに向き合う。その姿に涙したり、かっこいい!と胸を高鳴らせたりする女児は、わたしだけではないだろう。え、わたしが女児じゃないことについては触れないでもらえますか。
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8.さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ/永田カビ
タイトル、表紙、初めて出会った時の衝撃たるや!わたしが自分でエッセイを書こうと思ったきっかけの1冊だ。物語は、作者のカビさんが抱える「孤独」を語るところから始まる。誰かに抱きしめてほしい、と、オブラートに包むことなく叫び続ける様は、かっこよくて、そして痛々しい。そんな彼女が最終的に行きついたのが「レズ風俗」。その先に彼女がずっと求めていたものはあるのか、という、こんなにも身体を張ったレポは、他にないだろう。わたしはずっとカビさんの幸せを願いながら作品を買い続け、読み続け、そして、自分自身も書き続ける。それがきっと彼女の作品に“誠実である”ことなんじゃないか、と祈りながら。
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9.人馬/墨佳遼
こちらは漫画作品。……時は戦国時代。上半身は人、下半身は馬の姿をした「人馬(じんば)」という生き物が住んでいた、という説明から話はスタートする。人馬は本来山に暮らし人間と共存していたが、戦争が始まったことにより尊厳は奪われ、戦の道具として捕らえられてしまう。その中で生きる人馬たちの生涯、そして命の連なりを描いた大傑作。
この作品を読むと、生きることを諦めない、ということの、なんと辛く険しく、そして愛おしいことか、と思う。わたしは、生きることはつらく孤独で、険しくて、本当に、なんでこんなこと、と思う夜も往々にしてある。しかし、この漫画を読むと、わたしはじめ、生きとし生けるものが、1人で生きているわけではなくて、それはきっとわたしだけでなくて、みたいなことを考える。そして、その時間を慈しむことができる。長い夜に一気読みしてほしい作品だ。
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10.ここはすべての夜明けまえ/間宮改衣
10冊目には、今年読んだ本を。
「ここはすべての夜明けまえ」。なんと美しいタイトルか!と衝撃を受けて購入した本だ。内容としては、人類が滅んだ2123年、唯一の生命体「わたし」が、残された記憶を頼りに口頭で「家族史」を記録して作っていく、というものだ。
新幹線の中で一気読みしたのを覚えている。あまりの内容に、涙があふれてとまらなかった。両親の記録、兄弟の記録、愛していた人の記録、そして、わたし自身の記録。その記録を紡ぐという営みの、残酷で美しい様を、こんなにも表現できるのはすさまじいことだと思った。
わたしはこの本を読んだその日、新幹線で大好きな恋人に会いに行ったのだ、その時の「わたしは、この子と違って、いつか彼を忘れていくんだろうか」という気持ちと、「だからこそ、わたしはエッセイを書きたい、記録して、記憶していきたい」と思わせてくれた。そんな本に、今年新しく出会えたことは本当に幸福だった。
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今年も、色々な本と出会った。新しく読んだ本もあれば、改めて読み直した本もあり、本当に楽しかったな、と思う。
楽しかったな、と一言で言うにはちょっと色々と苦労もあったし、自殺しようとしてODしてみたり、部屋で包丁を投げて大暴れしてみたり、そんなこともしたけれど……まぁ、終わりよければすべてよし、ということで。
今年も沢山の本に出会えて、そして、孤独な夜に寄り添ってもらえて、本当に幸運だった。
この記事を読んだあなたも、少しでも孤独に寄り添える物語に出会えますように。
メリークリスマス!